銀白虎
「…飛鳥さん、安心してよ」
「え?」
「手のひら、無意識に握ってるよ?」
言われてみれば、確かにあたしは右手をグーにしていて。
開けば、手のひらに、爪痕がついていた。
「…なんか俺の言い方が悪かったせいで、飛鳥さんに妙な心配させちゃったみたい……」
「……要くん?」
「言うわけないよ。…そんなことしたら、竜に何されるか」
おどけたように肩をすくめて、優しい笑顔を見せてくれる。
それから、もうさっきの空気が嘘のように、あたしの手を取り、「あーあ、痛そう」なんて軽い声で言う。
………やっぱり、要くんには敵わない。
要くんは、
こんなこと言わなくても、竜くんも関係なしに、言わないで居てくれたんじゃないか、と少しだけ後悔した。