銀白虎
そして、あたしが気を取られている数分間のうちに何があったのか。
亜美と神崎くんは睨み合い、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。
うーん、元気だなぁ。
こんな天気でもこの2人をみていると、なんだか滅入っていた気分も少し上がってくる。
「こらーお前らー。いつまでも騒いでないで席つけー。授業始めんぞー」
その声に、教室のあちこちで聞こえていた音はピタリとやんで、椅子を引く音が一斉に響く。
もうすぐ期末が近いのもあってか、みんな素直だ。
「えーと、ここはこれがこうなるからこうなって…」
なんだか今日は、集中出来ない。
気を紛らすように外に目をやれば、ひたひたと、止む気配のない、雨。
朝よりも、勢いを増したような気がする。
今日も、あの家の前かな。
ーーーーー住宅街を抜ける手前のところにある、少し異様な家。
明日からここと言われてからほぼ毎日、あそこにいっているけれど。
いまだに、誰の家なのかは知らない。
それに、他の家とは違い、少し死角になるような場所にあって。
まるで、何かを隠すような………。
そんな、触れてはいけないもののような気がして。
ーーーーー誰にも、聞けずにいる。