銀白虎
「だいじょうぶ……力、抜けただけだから」
「そうか…」
ふっと、表情を緩め。ずっと強張っていた彼からも、力が抜けた気がした。
「良かった…。他にもなんかやられたんじゃねぇかと思った」
一瞬ほっとしたかと思えば、少し強張って……悔しそうな顔をする。
そんな彼の顔は、とても先輩を追い詰めていた人と同一人物には思えない。
「………よくないよ…」
「……は?」
「全然良くないよ!蓮見くん、大丈夫なの?!
仮にも、この学校の"王子様"なのに……。」
だから、ずっと自分の正体がバレないように、嘘の自分を演じてきたんじゃないの…?
それが、こんなとこで水の泡になってもいいの…?
あたしのせいだ………。
目の奥が熱い。胸が、苦しくて堪らない。
あたしのせいで、彼の正体がばれてしまったら…
どうしよう、どうしたら………
「…ばかだな、ほんと」
「え…?」
「いっつも人のことばっかり。もっと自分大事にしろよ」
真剣な瞳をして、私に言い放った彼。