銀白虎
そんなことないよ…。
私はいつだって自分が可愛くて、自分ばかり守ってるよ。
なんだか情けなくて、思わず下を向けば、彼の手が私の髪にそっと触れた。
「…んな、なって……」
ぼそりと呟いた彼の声は、よく聞き取れなかった。
「ここ、」
「ーーーーえ?」
「赤ぇのはどうした?」
いつの間にか、私の頰に、壊れ物に触るかのように手のひらを添えている。
「え、っとそれは…」
美和先輩に叩かれたものだけれど、あれはわたしも煽ってしまったような気がするし…
「あの女?」
けれど、言い訳を許さない、とでもいうような蓮見くんの強い視線が、私を離してくれない。
こんな近距離で、見つめられると、息が苦しくなる。
「ちが、うよ」
「……そうか」
自分から聞いてきたのに、あっさりとした返答。
ほんの少しだけ、寂しいと思ったのは、おかしいのかもしれない。
ほら。やっぱりあたしは身勝手なやつだ。
そんなことを、考えていたあたしは、その熱に気づくのが遅れた。
ーーーー息が止まりそうな程、近くに、彼の呼吸を感じた。