銀白虎
「っ!」
頰に当たる、その柔らかい温度は、急速に私の身体の熱を上げる。
一度、離し、そしてもう一度ゆっくりと。
まるで、硝子細工に触れるような、優しさだった。
「行くぞ」
その声を合図に、やっと現実に引き戻された。
それに、少し安堵して。
「…うん」
歩いていく彼は、びっくりするくらい、普通だ。
だけど……。
痕を辿るように、左頬に手を添えた。
ーーーあたしの頰にはまだ、彼の唇の熱が残っている。
でもとりあえず、彼を追いかけなければ、と踏み出した。
しかし、あっとなり振り返る。美和先輩が教室に倒れたままだ。
「あの、蓮見くん!……美和先輩は…」
「ああ、それは気にしなくていい」
気にしなくていいと言われても…。
恐る恐る声をかけてみたものの、よくわからない。
けれどいまは、彼のいうことに従うのが、正解な気がする。