銀白虎
流れる景色に適当に目を向けていたら、車が止まった。
蓮見くんの家に着いたのだろう。そう思ったら、違った。
「何してんだ」
いつの間にか、外からあたし側のドアをあけている蓮見くんの目が、早く降りろと訴えていた。
私が降りるのを見届けると、スタスタとその店へ歩いていく。
「ま、待って」
ぐんぐんその店へと入っていってしまう蓮見くんを、慌てて追いかける。
「あの、ここは……」
「見たらわかるだろ?」
確かにわかる。ここはどう見たって、美容院だ。だけどこれくらい、自分で整えようと思っていたのに…。
「そんな格好で帰ったら、組の奴らが大騒ぎする」
蓮見くんはあたしの心情を読み取ったように、そういった。
でも、お金そんなにあったかな……。
とりあえず、こっそりとお財布を確認。うーん……五千円1枚。微妙なラインだ。
「はすみくん……」
なるべく小さな声で話しかける。
そして彼が振り返った瞬間に、近づいて、周りには聞こえないように、「申し訳ないんだけど、私、そんなにお金持ってない…」と伝えた。
すると、呆れた顔をされた。
あれ、この感じどっかでも…。
いつだっけなーと考えていると、「どこまでお人好しなんだ」という声が返ってくる。
そして腕をぐいっと引っ張られ、「ここに座ってろ」と鏡のある席に座らせられた。