銀白虎





「はい。本当は、わたしなんかが側に居ちゃいけないって、わかってるのに……。……それでも、」


だけど、それ以上の言葉は、喉の奥が詰まって、出てこない。


「飛鳥ちゃん………」


「おい、終わったのかよ」

すると、突然聞こえた、聞きなれた声。

…その声を聞いただけで、安心してしまうのは、何故なんだろう?


「…急に出てきて失礼ね。当たり前でしょ?私を誰だと思ってんの」


「遅えんだよ。待ちくたびれた」


「もーっ!ほんと、可愛げがないんだからっ」


やっぱり、少しいつもより幼く感じる蓮見くん。

なんだか見ていると、胸があったかくなる。


「それよりほら。どうよ、この仕上がりは」

と、突然振られてびっくり。椅子をくるっと後ろにされて、さっきまで鏡越しに写っていた蓮見くんが、いきなり目の前に現れた。


「やっぱり私って天才だわ~」

なんて、誇らしげにする玲子さん。


今まで茶色く長かった髪は、ダークブラウンの落ち着いた髪色になった。ただ暗くしただけではなく、ツヤ重視で色々と混ぜてくれたらしい。

長さもボブとセミロングの間くらいで、一気に軽くなった。動くたびに、髪が首上でふわふわと揺れる。

こんなに短くしたのは初めてだけど、なんだか今までよりずっと明るい雰囲気になった気がする。



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