銀白虎
XV
彼が嫉妬する理由
「起きろ」
「んっ、」
その声に、ゆっくり瞼をあげる。
……あれからなんとなく、会話を続けられるような言葉も見つからず、寝たふりをした。
顔を上げれば、車の目の前には、蓮見くん家の大きく立派な門がそびえ立っている。いつ見ても、凄いと思う。
先に車を降りていた蓮見くんにもう一度促され、車を降りた。
辺りは真っ暗で、夕飯の時間はとっくに過ぎている時刻だろう。
みんなもう夕飯食べちゃったんだろうなぁ。今日のメニューはなんだったのかな。
玄関に着くと、クラさんと虎丸ちゃんが出迎えてくれた。
「わんっ!」
クラさんの横で綺麗にお座りをしていた虎丸ちゃんは、勢いよく私の元へ飛びついて来たので、慌てて抱き抱えた。
「あ、こらっ!虎丸っ」
注意するクラさんの声は華麗に無視して、私を見つめながら、おかえりと言っているかのような表情で見つめてくるので、可愛くて仕方ない。
「まったく……。若、結城さん、お疲れ様っした!」
深々とお辞儀する姿を見て、若への尊敬を改めて感じる。
私はなんだか自分の名前が呼ばれたことに、居た堪れなくて軽くお辞儀をし返した。
すると、クラさんが優しい笑みを向けてくれる。
なんだかその顔を見ただけで、家に帰ったきた、そんな安心感があった。