銀白虎
「…そうやって、今まで生きてきたんだ」
弱々しい、声に、胸がぎゅっと締めつけられるように苦しくなる。
正面からの体勢のせいで、いま、どんな表情をしてるかも、わからない。
ただ、苦しいくらい強く抱き締められて、”後悔”という色をのせた声だけが、あたしに届いて。
『あの子は変わってしまったわ………』
ずっと、今まで、お父さんとお母さんを殺したヤクザを、憎んでいた。
人として、最低で最悪な生き物だと思ってきた。
殺したいと、思ったこともあった。
それは、今も変わらないのに……。
蓮見くんを見ていると、ヤクザなんて間違ってる。そんな風に、言えなくなってしまう。
彼のお兄さんがいなくなってから、彼がどれだけ必死に、”白虎”を背負ってきたのか思うと、私なんかが否定していいものなのか、わからなくなる。
そして何よりも、今目の前にいる彼は、まるで縋り付くように私を抱きしめて、離さない。
そんな情けなくも感じるような姿がーーーーたまらなく、愛おしくて。
だから、あたしもしっかりと、力を込めて抱き締め返した。
そしたらより一層、彼が愛おしいと思った。
ーーーーー私も、どんなことをしても、彼を、守りたいと思った。