銀白虎






こんな言葉に、最適な返しが見つからない。


たくさん用意していたのに…。


偶然居合わせた、とか。

しらを切り通す、とか。

どんな返しにでも、何かしら返せる。誤魔化せる。そう思っていたのに。


……やめてよ。


そんなストレートな言葉は、想定外なの…。




「なあ、結城。あいつは、一体……何者なんだ?」


そんなまっすぐな瞳で見つめられたら、時が止まったかのように動けなくなる。

まるで、呼吸の仕方を忘れてしまったみたいに。






「pipipipipi」


金縛りから溶けていくような、そんな合図みたいな音だった。




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