銀白虎
そりゃそうだ。
あんな大きな声で電話越しとはいえ、耳元で叫ばれたらそうなるだろう…。
…凄いお母様ですね…。
それ意外言葉が出てこない。
「悪ぃ結城!早く帰んねぇと夕飯抜きにされてさ…」
耳は少しまともになったのか、くるっと振り返りあたしにそういう。
「あ…うん。大丈夫だよ。…頑張ってね!」
いろんな意味で…。
「送ってけなくてごめん」
そういうと、神崎くんは蓮見くんをちらっと見て、少し近付いてくる。
「…なんかあったらすぐ電話しろよ?」
小声であたしにそういった。
…神崎くんの方が今は大変な気がするのに、他人の心配なんて。
…なんていい人なんだ。
神崎くんは大きな鞄を抱えて、走っていった。
足が速くて、もう小さくなっていた。