【極短】誰よりも近くに
「つぅか……だって、おまえトシくんが好きだったんだろ?!」
「そ、そうだけどっ……」
「別に同情なんかいらねぇからな?」
「違うっ……そうじゃなくて……」
本当はすぐにでも頷いてしまいたかった美咲の返事に、俺はあえて表情を歪めた。
……美咲の性格をよく知ってるから。
だから、美咲の答えが本心からなのか、それともただの情なのか……
その辺がよく分からなかった。
別にその辺誤魔化したって付き合う事は出来るけど……俺が望むのはそんな付き合いじゃないから。
俺が、何年も望んできたのは……そんなんじゃないから。
……だから、俺が欲しいのはちゃんとした美咲の答え。
美咲の、本心――――……
俺の言葉が予想外だったのか、美咲はまだ言葉を選んでいるようで……
あたふたとしているのが、見て取れた。
だけど、それでも必死に選んだ言葉を俺に向ける。
「だって……さっきのトオルに、あたしドキドキしたんだもん……」
……ん? さっき? ……って、告白した時か?
「今まで見た事ないような男の顔してて……すごく、ドキドキした……」
……。
「分からないけどっ……あたし、こんなに誰かにドキドキしたの初めてだから……
だから……だからっ」
「……だから?」
ゆっくりと美咲に近付きながら問うと、美咲はまた口ごもって俯く。
「だから、何……?」
早く聞かせろよ……その続きを。
早く、変えろよ……この関係を……
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