【極短】誰よりも近くに
俺の挑発に促されるように、美咲は俺を見上げた。
そして……
「だから……あたしも、トオルを好きになれると思うから……
ってゆうか、今ももちろん好きなんだけど、違くて……そのっ……」
「うん?」
「……~~っ」
わざと意地悪すると、美咲の顔がカっと熱を帯びる。
真っ赤になった美咲に、つま先がくっつきそうなくらい近付くと、俺は美咲の頭に自分の額を乗せた。
「っ!!」
「……ゆっくりでいいから。もう何年も待ってたんだし、今更急がないから」
ずっと……ずっと、変えたかった関係。
ずっと、欲しかったモノ。
それが、手に入るなら……
「だから、俺の事好きになって。……トシくんなんかよりずっと」
「……うん」
美咲があまりに簡単に頷くから、俺はなんだか可笑しくなって笑みを零す。
だって……こんな簡単な事だったのか?
俺が何年も考えを巡らせてきた事は、こんなに簡単に決着がつく事だったのか?
……ったく。
ビビッてた自分が情けなくて仕方なくなる。
「ってゆうかね?」
「うん」
「あたしも……トオルの事好きかもって思ってた時あったんだよ?」
「はぁ?!」
「でも、トオルってなんか色んな子と付き合ったりしてたから……
だから、そんな関係になってすぐにお別れが来ちゃうなら友達の方がいいなって、そう思って……」
ガックリと肩を落とした俺に、美咲が首を傾げる。
あー……本当に情けねぇ。
俺が美咲から逃げてた時に、そんなチャンスがあったなんて……
……でも。
「じゃあ、一度好きになったならまた好きになれるだろ?」
「……それは、……うん」
「一度好きになったなら、そんなゆっくりじゃなくてもよくねぇ?」
「え……」
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