【極短】誰よりも近くに
驚いて見上げた美咲に、触れるだけのキスをすると……美咲の顔がおかしいくらい真っ赤に染まった。
……赤すぎねぇ?
「キスくらいで何赤く……あ? おまえもしかしてファースト……」
「うるさいっ! ……だってっ……いいよ、もう! どうせバカにしてるんでしょ!?
恋愛経験どうせゼロだもん!!」
「いや、バカになんかしてねぇけど?」
怒る美咲にそう言うと、美咲は疑いの目を俺に向ける。
そんな美咲に、俺はにっと口の端を上げて微笑んで見せた。
「俺のために取っといてくれたんだろ? すげぇ嬉しいけど?」
俺の言葉に美咲は黙って……そして、赤く染めた頬を緩めて微笑む。
……なんだ、その顔。反則だろ。
「あたしも……初めてがトオルで嬉しいかも」
「……」
ずっと変えたかった関係。
座りたかった隣の特別席。
これからは、外れたストッパーの修理で苦労しそうだ。
……つぅか、修理しなきゃダメ? これ。
「……美咲、もう一回していい?」
「っ!! やだよっ! もっとロマンチックなとこじゃなきゃヤダっ!!」
「……俺がいて美咲がいれば、それでもうロマンチックなんじゃねぇ?」
「……~~っ!」
憧れの多いお姫様。
でも……丸め込むのは案外簡単。……かも?
END