【極短】誰よりも近くに
俺と美咲が出会ったのは中学の頃。
同じ剣道部だったのがきっかけでなんとなく話すようになって、仲良くなった。
違う高校に進んだけど、お互い続けていた剣道がその関係を繋げていた。
遠征でたまに一緒になったり、大会でライバル校になってみたり。
思い出せば、その頃だったのかもしれない。
……俺が美咲を好きになったのは。
ぶっちゃけ中学の頃はなんとも思っていなかった。
俺よりも背が高かったし(俺が小さいんじゃなくてこいつがでかかった)、第一、仲間って感じで異性として意識なんかした事なかったし。
それが、高校1年の時の夏の大会で会った時……俺の中で何かが変わった。
『あれ、トオル背伸びた?!』
中学の頃と変わらない笑顔で話しかけてきた美咲に、鼓動が速まったのが分かった。
だって、確かに美咲の方が高かった身長が、今は俺のが高くて。
見下ろした美咲の姿に、すごく新鮮な気持ちになって。
『おまえが縮んだんじゃねぇ?』
照れ隠しにそんなつれない言葉を返した。
『縮む訳ないじゃん』
『なんか変なもんでも食ったんだろ。拾い食いすんなよ、もっとでかくなっても知らねぇぞ』
支離滅裂な俺の言葉にも気付かずに、美咲はむっとした顔して怒ってたけど。
でも……
知らなかっただろ。
こん時の俺の動揺を。
必死に隠した、気付いたばかりの気持ち……
その気持ちを今も隠したままおまえの隣にいる事。
美咲は知らねぇだろ。
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