【極短】誰よりも近くに
「えー……どれにしよう」
オレンジの間接照明に照らされながら、美咲はメニューに目を奪われっぱなし。
……まだ決めてたのか。何でもいいよ、別に。
ハキハキして見えるのに、意外と優柔不断なとこがある美咲。
こんな風にメニューが決まらないのなんかしょっちゅうだ。
……悩んでるとこ見てんの嫌いじゃないから別にいいんだけど。
「じゃあ、コレとコレと……あとこの大きいサイズのでいい?」
好きに決めていいって言ってるのに、俺に聞いてくる美咲。
何が心配なのか、少し不安気にしている美咲に、俺は少し微笑んで頷く。
「ん、いいんじゃねぇ?」
「あ、すみませーん」
普通なら男がするんじゃねぇかなーと思うオーダーをチャッチャとこなす美咲を、バレないように盗み見る。
今日のピアスは長が目のチェーンに石がぶら下がっているデザイン。
右に一つと左に二つ。
ピンク色の石は多分恋愛運向上だとかそんな意味でもあるんだろうな。
最近の美咲は「トシくん」の事ばっか考えてるから。
……くそ。やっぱ気に入らねぇ。
「……なんか今日不機嫌?」
「別に。……それより話があるんだろ? 何?」
首を傾げる美咲に、不機嫌そうに歪めた表情を向ける。
すると、美咲は少し躊躇って(ためらって)からいつもより小さめの声で話し出した。
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