【極短】誰よりも近くに
「美咲……」
「ん?」
こんなに近くにいながら男として見てもらないなんて、もう限界。
他の男の話をされるのなんて……もう、限界。
美咲……
頼むから、俺を見ろよ。
気付けよ、俺の気持ちに。
振り向いてくれよ、俺に――――……
じっと見つめる俺を、不思議そうに見つめ返す美咲。
月明かりが2人を照らす中……
俺は、長い間溜めてきた想いを言葉にする。
「いい加減さ、俺に落ち着けば?」
「……え」
「仕事に生きんなら……俺の隣でそうしろよ」
緊張すると思っていたのに、思ったよりもすらっと言葉が口をついた。
ずっとずっと秘めていた想いだったからなのか、自分でも不思議なくらいに自然と。
やっと俺の言葉に気付いた美咲は顔を俯かせて……そして赤く染めていた。
初めて見る美咲に、俺の緊張がやっと覚醒する。
自分の言った言葉の意味を、やっと理解する。
……別にいいよ。振ってくれても。
だけど、このまま気持ちを知られないままの関係が、もうつらかったんだ。
それだけ分かってくれれば……
なんて、キレイ事だけど。
俺の視線の先で、美咲が赤い顔を上げる。
そして……
「……トオル、あたしの事好き、なの?」
美咲がやっとの思いで向けた視線が、俺を捕らえる。
動揺しながらも必死に俺を見る美咲。
……誤魔化せる訳がない。
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