【極短】誰よりも近くに


「好きだ……ずっと前から、美咲が好きだった」


素直に白状してしまえば、俺の気持ちは今までの苦悩が嘘みたいにすっと軽くなっていく。

溜めすぎてた想い。

誰にも言えない想いは……やっと窮屈な空間から吐き出されて、無限の大きさに膨れ上がって消える。

冬の空気に溶ける吐息みたいに。


だけど、確かに存在する想い。

言葉になった俺の気持ち。


それを聞いた美咲はだいぶ戸惑ってるみたいだったけど……やがて、意を決したように口を開いた。


「ずっとって……もっと早く言ってくれればよかったのに」

「言えねぇだろ……友達だったし。……それに美咲が俺の事そういう対象に見てないのは知ってたし」

「それはっ……」

「実際そうだろ? 今も困ってるし。……別におまえの事困らせたくて言ったんじゃねぇんだ。

ただ……もうそろそろ吐き出さないと限界だったから……

でも、いいよ。美咲が友達がいいなら今まで通り……」

「違うっ……」


俺の言葉を遮った美咲。

伏せていた視線を上げると……そこには、赤い顔しながらも真っ直ぐに俺を見る美咲の姿があった。

小さく震える身体。

気持ちを落ち着けるように吐いた息が白く染まる。


「違うよっ……確かにトオルは友達だけど……

だけど、だけど、トオルはあたしにとってすごく大切な人でっ……

だからっ……」


美咲が、まとまらない気持ちを一生懸命言葉にする。

だけど、やがて見つけた答えに……震える声を絞り出す。


「少しづつでもいい……?」

「え……?」

「急に恋人とか、無理だと思うから……

少しづつ、でもいい……?」

「……――――っ」



信じられない答えに、俺は言葉を失って……

そんな俺を、美咲がじっと見つめる。



少しづつって……

それって――――……





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