みちゆき
「こんな所にいていいんですか?」
 蒼みがかる目を向けて少年が訊く。少女は下ろした長い髪を揺らして、首を縦に
振った。
「嘘でしょう?お父上はあなたを見せびらかすので忙しいはずだ。さ、戻って。こん
な所に居るのを見つけられたら……」
 少年の言葉を遮って少女は花のように笑う。
「お父様には頭が痛いと言ってあるわ。……怖いの?」
「ええ。やっと見つけられた職場を無くすのは嫌ですから」
「そうね。洋妾(ラシャメン)の子を雇ってくれる所はそう無いでしょうけど。でもここだったら野宿の方がまだましよ。そう思わない?」

 少女は部屋を見回した。


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