みちゆき
 使われていなかった野外の物置小屋の天井は所々雨漏りがし、すきま風は絶えることがない。それでも吝嗇の雇い主がくれるのは炭代は自分もちの火鉢とごくごく薄い使い古しの布団だけ。

「あなたは苦労をしたことが無いから言えるんですよ。賄いが付いているから良い方です」
「白湯のような粥と雀の涙程の菜だけれどもね」
 くつくつと少女が笑う。
「私、お父様が嫌いよ。口ではいくらでも綺麗事を言って……その実雇い人にはこんな生活を強いているのだもの。あなたを雇っているのも、行き場のない人間ならどんな待遇でも文句を言わないでしょう?そういう事よ。あなたのその顔だったら色町にでも行った方が稼げてよ?」
「……」
 不快げに顔を背けた少年を取りなすように少女はすり寄った。

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