就活魔女も夢を見る
「アカネ?」


僕は戸惑いながら言った。


もう一月も一緒に過ごしているけど、彼女の涙を見たのは初めてだった。


いつも明るいアカネが、ボケ(?)を流されたくらいで泣くなんて考えもしなかった。


「新田智則……」アカネは頬をつたう涙を手で拭った。「ときめいたぁ?」


「……は?」


やっぱり、そんなことで泣くような女じゃなかった。


アカネはまばゆいばかりの笑みを浮かべている。


涙はすでにどこかへ消えていた。


女の涙はまったく信用できない。


「どぉ? どぉ? ときめいたぁ?」


「……その服はどうしたの?」


「これー? バイト先の制服だよぉ」


「制服? そんなの着て仕事してるわけ?」


「そんなのってなんだよー、この落ちこぼれぇ! バイトしろって言ったのは新田智則でしょー!」


「いや、落ちこぼれはおまえだろうが。僕はもう仕事してるから。たしかにバイトすれば、とは言ったけど」


そう、バイトをすすめたのは僕だった。
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