~KissHug~
小さな病院だった。
 
  こんなところに病院があるんだ

地下鉄とバスを乗り継ぎ
たどりつく。

途中芳樹の口数は減ったが
冷たくなった手が
しっかりと私の手をにぎった。



私は待合室で芳樹を待った。
テレビでは、朝と同じ芸能人が
記者会見をしていた。

  この人、結婚するんだ…
  いい歌歌うんだよな~
  彼女、ずっと想われて幸せだな~



テレビを見ていると
芳樹が横を通り過ぎた。


  どこにいくの?


私は慌てて後をついて行く。
芳樹は相談室に入って行った。


しばらくして、その部屋から大きな声が
聞こえてきた。

その声に耳をすます。

芳樹が怒鳴っていた。


「もう、やめてください。
母を楽にしてください。」


「そんなことして
何になるんですか?
母の人生を踏みにじって
これがつぐないなんですか?
狂ってます!!」

相手が何を話してるのかは
聞きとれなかったが
でも 芳樹は泣き声だった。



私は、待合室のいすに走って戻った。

芳樹はなかなか出てこなかった。
< 149 / 451 >

この作品をシェア

pagetop