~KissHug~
悲しかったことが一遍に爆発した。

芳樹は黙って髪を撫ぜてくれた。

素良に言い離された
  もう会わない
私のみじめさ・・・・
情けなさ・・・・
涙がどんどん流れ落ちる。


しばらく泣いて
しゃくりあげが大きな深呼吸に変わった。

「大丈夫?」

「ごめんなさい。いつも・・・・」

「謝るな。」

「どうして、芳樹は優しいの?
私は、この前千鶴さんに言われたけど、
優しくされる価値は
千鶴さんに比べたらないのに・・・・
あの日なんて答えたの?」

「ぷーちゃんのほうが
好きだから・・・って答えた。」

「どうして?」

「うん・・・
他の女とは違うんだ。
昔さ、かあさんとまだ二人っきりの時
知らないおばさんといっても
あの頃はまだ若い人なんだけど
かあさんも若かったから
アパートに来たんだ。」


私の肩を抱いて
月を見上げた。

「あの日は、怖いテレビを見てしまって
一人で泣いていた。
かあさんは、夜の仕事に出て
夕方から俺は一人ぼっちで
心細かった。
ずっと、ずっと泣き続けていた。
アパートのピンポーンが鳴った。
出てはいけないって言われてたけど
俺は訪問者よりも
一人でいることが怖かった。
玄関越しに話をした。

『おかあさんはいる?』

『仕事ヒック…ヒック…』
嗚咽でしゃべられなかった。

『泣いているの?』
『怖いの、一人だから』

『開けてくれる?』


俺はその優しい声にドアを開けたんだ。」
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