~KissHug~
悩み抜いた末の決断だった。
治樹という人間は不器用だった。
二人を同時に愛したり
うまくやっていける人間ではなかった。

病院で見かける
雅恵の孤独な育児の戦いは
同じ男の子供を持つ
春江にはきつかった。

病室に父親が代わる代わる
やってくる夕方の
病室で
雅恵はカーテンをひいて
ひたすら素良を抱き続けていた。



  私はひとりだって生きていける


看護師でいるかぎり
母ひとり
子ひとり
何とか生きていけるけど


雅恵には学歴しかなかった。
治樹と別れたら
どうして生きていくんだろう・・・・


   あまりに差のある私たちだった。

最初は憎しみもあったけど
親になって初めてわかることが
たくさんあった。


  もう・・・・
  やめよう・・・・・
  こんな不幸なことは・・・・・



春江は、治樹に甘えて過ごして
芳樹と姿を消した。


再び会う時
春江は、眠りから覚めなかった。




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