JEWEL





「…ひどい…」


女はそう呟くと

再びお菓子に視線を向けた。



…買えばいいのに。


そう思ったつもりが

どうやら声に出てたらしい。



女は目だけで俺を見ると


「買えるんだったら、買ってるもん。」


ポツリと呟いた。




「金ねぇの?」


聞き返した俺に


「ないです」


と呟き返す女。



………。


しゃあねぇなぁ。


育ち上、俺は困ってるやつを見ると

ほっとけないタイプ。



「それ、食っていいよ」


「…へっ!?」



俺の言葉に、女は目を丸くして俺を見た。


「だから、食えば?

なんか訳ありなんだろ?

金は俺が払うし。」


ため息混じりにそう言うと


「え、でも…」


女は葛藤するかのように

俺とチョコレートを交互に見る。



…変な女だな…

俺はそう思いながら


「あのな。

鳴る程腹減ってるのに金持ってなくて

何も買えないやつを平気でほっとくほど

俺、残酷じゃねぇよ」


そう言ってやった。



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