JEWEL





「…何だよ?」


肩で息をして早くなった鼓動を調えようとする女に

俺は冷たく聞き返す。


そんな俺の態度とは裏腹に


「あたし、蜷川 澪ってゆーの!


昨日の御礼がしたいんだけど

このあと時間ある?」


女は満面の笑みでそう言った。



………



「…おまえな、「澪!!」



………。



「澪って呼んでよ?」



………なんなんだ、この女…。



真下から俺の顔を覗き込む姿は

可愛いが…


性格、最悪じゃね?


そんなことを思いながら

言い合いをしても勝てないと判断した俺は



「…じゃあ、朝メシ奢れ。」


肩を落としながらそう呟いた。



「ほんとーー!!??

よし、行こっ!」


超嫌な奴気取りで返事をしたつもりが

女…じゃなくて澪は

満面の笑みで俺の腕を掴むと


さっそく歩きだした。





引っ張られながら


…変な女。


そんなことを思っていた俺は


自分の頬が緩んでいたことにも

この様子をいろんな奴が見てたことにも


気付いてなかった。




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