JEWEL





俺が制服に着替えたのを確認すると

すでに私服に着替えた面々は


「斎くんありがとう!!

メリークリスマス!!」


などと口々に言いながら

店を後にした。



彼ら彼女らは、みなこれからデートらしい。


ガラス張りの扉の向こうに

去っていく嬉しそうな背中を見ながら


「…何がそんなにいいんかね?」


俺は一言呟いて

仕事に取り掛かった。















…う―ん、恐るべしクリスマス。


やるべき仕事をひとつずつこなしてくと

あっというまに1時間が経ったのだが。



俺が入ってから

客がまだ一人も来ていない。



みんなどこかで

楽しく過ごしているのだろうか。



なんとなく

室内にいるのがつまらなくなった俺は

上着を羽織って店の外へ出た。





「げ、積もってる…」



ここに来る途中に降り出した雪は

どうやら黙々と降り続けたらしい。



誰も入ってこなかった駐車場は

真っ白に染まっていた。



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