JEWEL
ふと上を見上げると
舞い落ちる真っ白な雪とは似つかない
黒とも、灰色とも、紺ともいえない
なんとも微妙な色をした空が広がっていた。
…そういや、
あの日もこんな空だったろうか。
こんな寒さだったろうか。
まだ、7歳だった俺。
”疑う”
”裏切る”
”見捨てる”
汚いことなんて何も知らなかった俺。
クリスマス・イヴの夜、父と母は俺を車に乗せ
『サンタさんの家へ行こう』
そう言った。
連れて来られた場所は
真っ白なコンクリートの建物。
周りには何もなく
その建物があるだけだった。
『ここにサンタさんいるの?』
無邪気だった俺は
馬鹿みたいに信じて
『そう。
子供しか入れない場所なの。
いっておいで?』
母のそんな言葉を真に受けて
その建物に入っていった。