JEWEL





『…サンタさん?』


そう呟きながら扉を開け、そっと部屋の中に入っていくと

本当にサンタさんがいた。



たくさん、子供がいた。



大人も、数人いた。



みんな、俺を見て、しばらく黙った。



一人の大人が、

俺の横を擦り抜けて外へ飛び出して行った。


サンタさんは俺のところまでゆっくり歩いてきて



『メリークリスマス』



って言って、俺を抱きしめた。





何がなんだか、わからなかったんだ。


ただ、みんなが俺によってきて

『キミ、名前は?』

『今来たの?』

たくさん、話しかけてきてくれて

素直に嬉しかったんだよ。





だから、そんなこと気付かなかった。

あまりに楽しい夜だったから。





まさか

そこが施設だったなんてさ。








まさか

自分が捨てられただなんてさ。



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