奏―たった一つの想い―
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「奏嘉♪おはよ!」

またこいつだ。

「ねぇねぇ。おはようわ?」

子犬のような目をして、
くるくる回って。

「そおかぁ~」

………

『おはよ』

そんなこいつ。
奏多に、
私は弱い。

始まりは、
こいつが入学してきたときだった。

私は、
代表として挨拶をしていた。
そんな私を、
奏多は興味津々に見てきて、
今みたいに目をキラキラさせて、
ポカーンと口を開けて、
じーと見てきた。

耐え切れなくなった私は、
早口で挨拶を終え、
そそくさとステージから降りた。

やっとこれで、
こいつの目線から外れると思ってたら、
こいつは何故か、
入学式の間ずっと、
私をじっと見てきた。

退場のときまでも、
私を見てた。

さすがにキモくて、
私はすぐ目をそらした。

その日から、
奏多は私にくっついてくる。

なんでだろうと思った。
でも、
どうせ聞いても、
まともな返事は返ってこない気がするから、
私はとくに聞かないでいた。

なのに、

「なんでくっついて歩くか聞かないの?」

ってこいつが自分から聞いてきたから、

『なんで?』

って聞いたら、
やっぱり

「奏嘉さんが好きだから」

と、
どこで覚えたかも分からない私の名前をあげて、
くだらない返事を返してきた。

だからと言って、
私は年下の趣味もないし、
特にこいつと付き合う理由もないからほったらかしにしてた。
なのに、
無駄にこいつは、
私の後ろをくっついて歩く。

最近は、
付き合ってるとまで噂され始めた。

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