みかん箱
その日、いつもの帰り道だった。
寒さが厳しい日だった。
俺と川瀬は、二人で歩いていた。
人通りもない田舎道。神社のあたりは、暗かった。
俺と川瀬の会話が一瞬途絶えた。俺の左手と川瀬の右手が触れた。
俺は、川瀬の小さな右手を握った。川瀬も指を絡めて握ってくる。
俺は、顔が熱くなる。
手に汗をかいて嫌われるんじゃないかって考える。
だけど、全然違う会話をして、この緊張をごまかす。
川瀬の冷たい手は、ガラスのように繊細なかんじがした。

突然、暗がりに変な叫び声を聞いた。
前を見ると、大柄な男が立っていた。
俺は、すぐにやばいと感じた。
男は、また叫ぶとこっちに走ってきた。
俺は、とっさに川瀬の前に立った。
しかし、どうしたらいいかわからない。
男は、勢いをつけて突進してきた。
俺は、アスファルトに叩きつけられた。
男の眼はギラギラとしている。歯並びの悪い、ボサボサの髪に髭の男。
男は、俺に馬乗りになった。
俺は、持っていたバッグで男を叩く。
蹴りあげるが、男は全然効かない。
押さえつけられて動けない!
体育の授業で柔道部のヤツに寝技かけられたときみたいだ。
この男、一体、どういうわけなんだ。
男は、俺の服を脱がす。いや、剥ぎ取る。
俺も必死に暴れる。だが、抵抗しても抵抗してもダメだった。
男の涎が顔にかかる。
そして、突然、焼けた鉄串が刺さったような衝撃。
肉が裂ける感触。
俺は、激痛に力が入らない。
男は、気持ち悪い声をあげながら何度も何度も腰を打ち付けてくる。
川瀬……。

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