ゆびきり



俺はゆっくり屋上の扉を開けた。


誰かが、背中を丸め、うつむき加減で弁当を食べていた。




葉子だ。



「おい」


振り向いた葉子は笑っていた。


否、笑おうとしていた。



泣いてたのバレバレなんだよ。


「なんで葵とケンカしてんだよ。葵に聞いても言わねえし」


葉子は、俺のせいだと言った。

俺が葵を大事にしないからだ、と。


そして葉子は立つや否や、俺を屋上から追い出し、扉を閉めてしまった。



「ちょっ…」


俺のわずかな抵抗は、まったくもって無意味だった。



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