ゆびきり
「葵」
俺は今日だけ部活を休んで、葵を送って帰ることにした。
いつもは部活があって一緒に帰れないから、葵は本当に嬉しそうだった。
ごめんな。
最後だけこんな…ずるいよな。
「僕と、別れてほしい」
「え…?」
葵の顔からは、笑みが消えた。
葵、今怒ってる?悲しんでる?
殴りたかったら、殴ってくれてかまわねーから。
「うちのこと…嫌いになった?」
葵の目から、涙が流れ落ちた。
それでも懸命に笑おうとする姿が、哀しくていとおしく思えた。
「違う!葵のことは、いい彼女だと思ってる。でも…大切にしたい奴がいるんだ」
もっと冷たく言うべきなのかもしれない。
でもそんなことできねーよ。
葵が、どれだけ俺のこと想ってくれてるか知ってるから。
「そっか…。わかった。今まで、うちと付き合ってくれてありがとね」
葵は、ここでいいよと言って、独り歩いていった。
俺は、追いかけることなんてできなかった。
俺にはそんな資格ねーから。
でも葵、お前にも幸せになってほしいよ。