ゆびきり



「葵」


俺は今日だけ部活を休んで、葵を送って帰ることにした。


いつもは部活があって一緒に帰れないから、葵は本当に嬉しそうだった。



ごめんな。

最後だけこんな…ずるいよな。



「僕と、別れてほしい」




「え…?」



葵の顔からは、笑みが消えた。



葵、今怒ってる?悲しんでる?


殴りたかったら、殴ってくれてかまわねーから。



「うちのこと…嫌いになった?」


葵の目から、涙が流れ落ちた。

それでも懸命に笑おうとする姿が、哀しくていとおしく思えた。


「違う!葵のことは、いい彼女だと思ってる。でも…大切にしたい奴がいるんだ」


もっと冷たく言うべきなのかもしれない。


でもそんなことできねーよ。

葵が、どれだけ俺のこと想ってくれてるか知ってるから。



「そっか…。わかった。今まで、うちと付き合ってくれてありがとね」



葵は、ここでいいよと言って、独り歩いていった。


俺は、追いかけることなんてできなかった。


俺にはそんな資格ねーから。




でも葵、お前にも幸せになってほしいよ。





< 107 / 117 >

この作品をシェア

pagetop