ゆびきり
「気にしてないよ。それにしてもびっくりした。いきなり"慶ちゃん"だもん」
「山下慶太」は、自己紹介の時のように笑ってそう言った。
その笑顔や口調が、なんとなく懐かしい気がした。
ああ…でも、人違いなんだね。
あなたは本当に、慶ちゃんじゃないんだね。
「でもこれも何かの縁だし、これからも仲良くしよう?」
「うん、ありがとう」
それも悪くないと思った。
どうせもう慶ちゃんに会えないなら、この「山下慶太」くんとも友達になってみたい。
でも本当は、心にすきま風が吹いたような気分だった。