ゆびきり
「そっちの方が、あたしは好きだな」
桶川葉子は、さも当然のようにそう言った。
少しだけ…嬉しかった。
こんな性格の悪い俺を『好き』って言ってくれる人なんて、いないと思ってた。
彼女に深い意味なんかないのはわかってる。
でも、嬉しかったんだ。
「はあ?お前バカだろ」
俺はそんな気持ちを隠すように言った。
「疲れないの?」
いろいろ聞きたがる奴だなあ。
「別に。もう慣れた」
俺がそう言うと、彼女は少し、寂しそうな、切なそうな顔をした。
でもこれは、強がりでも何でもない。
ホントのことだ。
小1からやってんだ、自然と慣れるだろ。