ゆびきり
俺が葵と教室を出ようとしたその時、
「こうして見ると、ホントの優等生みたいだよね」
後ろにいた葉子がこんなことをぽろっと口走った。
「おまッ」
俺は慌ててしまって、危うく『お前ふざけんなよ』って口にするところだった。
危ねー危ねー。
いつもの俺は『お前』とか言わないからな。
「おま?」
葵が不思議そうな顔で俺を覗き込んだ。
「…ううん。なんでもないよ」
俺はそう言ってその場を後にした。
葉子の野郎、後で覚えてろよ。