ゆびきり
「優等生がそんなんでいいの?」
あたしは嫌みっぽくそう言ってやった。
「うるせっ!」
いつもは大人っぽい慶太くんが幼く見えて、どうしようもなく可愛くて、
あははって笑ってしまった。
その時、
「慶太、おはよう!」
声の方向を向くと、いつも可愛い葵がこっちに向かって歩いてきた。
「葵、おはよう」
慶太くんはとっさに表の顔に戻った。
「おはよう、葵」
あたしが声をかけたのに、葵は返してはくれなかった。
あれ、聞こえなかったかな?
葵はそのまま慶太くんと楽しげに話し続けた。
その様子をあたしは笑いながら黙って見ていた。