ゆびきり
あたしが泣きながらお弁当を食べていると、屋上のドアが開いて誰かが入ってきた。
やば、涙止めなきゃ。
あたしは、誰が入ってきたかもわからず、涙を止めることに必死だった。
「おい」
後ろから聞こえた声は、あたしの大好きな、好きでいちゃいけない人の声だった。
「何?」
あたしは精一杯普通の表情を作って、振り向いた。
泣いてたこと、バレたくない。
「なんで葵とケンカしてんだよ。葵に聞いても言わねえし」
慶太くんの声が、優しい。
心配してくれてるんだね。
でも、慶太くんのせいだよ。
慶太くんがあたしに優しくするからいけないんだよ。