Joker

少年はというと暗闇のなか、なんとか男の気配を捉え、伸ばした右手で男の服の裾をぎゅっと掴んだ。


足元から、ぞくぞくと恐怖感が襲ってくる。

かたかたと、微かな震えを全身で感じる。


「……あぁ、きみは暗闇はダメなんだっけ」


震えは男にも伝わったらしく、そう声がしたかと思うと、空気が揺れて世界が戻った。

もとの、光ある世界。

蒼い月はもう、空に還っていた。


「ところで」


結局、“答え”は口にせず、男は少年に問いかけた。


「きみにあの月を贈れば、きみ以外の者は、今私たちの居た永遠の闇を彷徨わされる羽目になるぞ」

──それでもきみは、お月さまを欲しいかい?


少年は少し考えこんだ。

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