Joker

それは、少年が月を手にすれば、他の全ての住人は、光を失うということ。


ブルー・ムーン、蒼い月。

誰がものかと問われれば、みなのものだとひとは言う。


お月さまは、この現実かもわからない世界の、唯一にして絶対の道標。

それを無くして、どう生き抜けというのだろう。


「それが答えさ」

男は笑う。

さっきまでより少しだけ、心あるひとの笑い方。


少年が喜べなかった訳は、他の人々の行きつく先を、どこか予想できていたから。

男が言うのはそういうこと。


「今まだきみは、お月さまを欲するかい?」


男の問いに、少年は首を横に振る。

「じゃあきみは今、何を望む?」


からかうような口調に向かい、少年は逆に訊き返す。

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