Joker
「どうして何か、望まなければならないの」
「何故って? それは」
男はじらすように微妙な間をおいた後、
「それは、今日がそういう日だからさ」
懐かしむような光を帯びた瞳を。
少年に向けた。
「私のもとへ訪れたのは、きみだけじゃない」
少年はしばし男の言葉を咀嚼する。
そして、そう言えば何で自分はこの男に出会ったんだっけ、と首をかしげた。
「空を翔ぶべきものではないのが夜空をかけるのは、世界の理に反するだろう?」
唐突に、男が話しだす。
疑問形だが、答えを求めている風でもなく。
少年は、黙って男を見つめるのみ。