Joker


「僕、家に帰りたい」


「そうか」


ジョーカーは、少し寂しげに、だけど、賢い望みだな、と呟いた。

望まぬ限り、もといた場所には戻れないから。


それなのに違う願い事をした者は、ジョーカーの世界で暮らすこととなる。


それが、この世界の住人。


ジョーカーはまた、宙にしるしを描く。

空間が、歪む。


どこからともなく現れた、絨毯のような白いモノに、乗りなさい、と促され、少年はそっと足をかけた。

今なおしるしを維持するために、動かせない右手はそのまま、男は空いた左手で、白いそれをそっと押した。


ふわり。

少年を乗せ、それはゆっくり浮かびあがる。

< 18 / 27 >

この作品をシェア

pagetop