Joker
「僕、家に帰りたい」
「そうか」
ジョーカーは、少し寂しげに、だけど、賢い望みだな、と呟いた。
望まぬ限り、もといた場所には戻れないから。
それなのに違う願い事をした者は、ジョーカーの世界で暮らすこととなる。
それが、この世界の住人。
ジョーカーはまた、宙にしるしを描く。
空間が、歪む。
どこからともなく現れた、絨毯のような白いモノに、乗りなさい、と促され、少年はそっと足をかけた。
今なおしるしを維持するために、動かせない右手はそのまま、男は空いた左手で、白いそれをそっと押した。
ふわり。
少年を乗せ、それはゆっくり浮かびあがる。