Joker
「いきなさい」
男の声が、優しく響く。
白いモノは、宙をたゆたい、少年のもといた世界へと向かう。
その後ろ姿に、ジョーカーは最後の言葉を投げ掛ける。
とっておきの、笑顔を添えて。
「メリー・クリスマス」
……いつだか昔、教わった。
今日は特別な日だって。
翔ぶはずのない生きものが、ソリをひきつつ空を翔るから、1年に1度空間の歪む夜。
その日はクリスマスというと、男はその時初めて知った。
だから意味など分からないけど、帰りゆく子に言うことにした。
“メリークリスマス”。