Joker
その、勿体ぶった言い方に、少年は明らかに不機嫌な顔をする。
そして、
「どうせお…兄さんもくれない、でしょ? パパとおんなじ。
パパね、僕がお月さま頂戴って言ったら、目玉焼き作ってくれたんだよ」
子供騙しだ、と、ふいと視線をそむけた。
男は可笑しそうに笑う。
くつくつと、静かなる夜の世界に、男の笑い声だけが暫し響いた。
「何で笑うのさ」
「いや。きみの父上は、だいぶ面白い者のようだ」
「そう?」
言われてみると、そういう気もしてくるから不思議だ。
だけどやっぱり、目玉焼きで誤魔化されるのは納得いかない。
黄身は確かにまんまるで、お月さまに見えるけど。
そしてその目玉焼きは、やけに美味しかったけど。