Joker

その、勿体ぶった言い方に、少年は明らかに不機嫌な顔をする。


そして、

「どうせお…兄さんもくれない、でしょ? パパとおんなじ。

パパね、僕がお月さま頂戴って言ったら、目玉焼き作ってくれたんだよ」


子供騙しだ、と、ふいと視線をそむけた。

男は可笑しそうに笑う。

くつくつと、静かなる夜の世界に、男の笑い声だけが暫し響いた。


「何で笑うのさ」

「いや。きみの父上は、だいぶ面白い者のようだ」

「そう?」


言われてみると、そういう気もしてくるから不思議だ。


だけどやっぱり、目玉焼きで誤魔化されるのは納得いかない。

黄身は確かにまんまるで、お月さまに見えるけど。

そしてその目玉焼きは、やけに美味しかったけど。

< 3 / 27 >

この作品をシェア

pagetop