Joker

「ねぇ、だけどお兄さんは、本当の、くれるでしょ」


「どうしようかな」


ハッキリしない男にだんだん、少年は苛々してくる。

彼はもともと、忍耐強い方ではない。


「……お兄さん、出来ないんだ」


小さく言ったその言葉に、男はぴくっと反応した。

「私が出来ないわけ、ないじゃないか」


男は自信ありげに断言する。

じゃあさ、と少年は言う。


「僕に取ってよ」


男はやってやろうじゃないかと頷いた。

そして、ところで、と訊ねる。


「きみはどうして、お月さまが欲しいんだ?」

< 4 / 27 >

この作品をシェア

pagetop