Joker

……だって。

少年は答える。


「怖いんだもの」

「そうか。何が?」


「暗闇」


「何故?」

「……閉じ込められたんだ」


少年の声が掠れる。

その頭を、男は優しく撫でた。

少年は、その手を払いのける。


「そう照れるな」

「照れてない」


男は懲りずにまた手を伸ばす。

少年はもう、何も言わない。というより呆れて何も言えない。


「いや、きみは可愛いなと思ってね」


悪びれもなく、そう言う男に、少年は黙って距離をおいた。

これで男の手は届かない。

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