Joker
「逃げなくたって、いいじゃないか」
男は拗ねたように寂しげに言う。
少年は、男は本当に自分より歳上なのかと疑いたくなった。
だけど、しなやかな身体は、子供のものではないように思う。
だからといって幾つに見えると訊かれたら、答えられないのだけれど。
年齢不詳の顔立ちに、何とも説明し難い服装。
性別も不詳と言いたいが、中性的な雰囲気のわりに、無駄のない体格と低い声で、男だろうと思われた。
そんな彼が、お月さまをくれるという。
不思議な空気を纏う彼なら、出来るような気がしたが、それも最初だけの話で、今は疑う気持ちが強い。