Joker

「わっ!?」


少年は、今度は両目を自分で覆った。

恐る恐る、隙間をあけて、指の間から男を伺う。


「なんだ? 望みは叶えたではないか」


悪びれもせず、男は笑う。

少年は、どうして男は普通でいられるんだと思えて仕方ない。


男は本当に、お月さまをとってきた。

少年の目の前には、眩しいばかりの光の塊。

そう、目も開けていられない程の。


ほんものの、お月さま。


望んだものは、確かにそこにあるはずなのに、どうしてだろう、少年は素直に喜べない。

答えを求めるかのように、少年はそっと男を見やる。

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