アネモネの花
「いつも大変だね」

そう心配の意をこめて言う私に、紘人は決まって同じ言葉で答える。

「好きなことをやってるんだから、苦にはならないんだよっ!」


私はそんな他愛の無い会話が楽しかった。



“私の好きなサッカー”

“紘人の好きなサッカー”


それをお互いに話して、聞いて…

それだけで楽しかった。

それだけで幸せだった。


だからそれを、ただ単に“恋”だと決めてしまうのは、私にはまだ出来なかった。


だって――

この日常は、ずっと変わらないものだと思っていたから。


だけど、

いとも簡単に、

あっさりと変わってしまったんだ…。
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