アネモネの花
試合だ、と言って去った私が5分もしないうちに今は紘人の目の前にいる。


「あれ?」


不思議な表情で紘人が私を見る。



「あのねー。紘人もこっち来たらどうかって…」


言われると思ってなかったのか、一瞬目を見開いて照れくさそうに紘人は答える。



「え…いいよ。ここでも十分見えるし」

「でも、近くで見たいでしょ?フットサルの試合…」


紘人が否定しないような言葉を選んで私は言う。


「まぁ…、ね」


フットサルコートを横目でチラっと見て、紘人が答えた。
< 79 / 185 >

この作品をシェア

pagetop